読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

まにまに音楽生活

よくある音楽、本、生活などについてのブログです。

Syrup16g 『Hurt』

本当にリリースされたシロップ16gの6年ぶりの新作『Hurt』。

Hurt

Hurt

 

全体として、想像していた以上にアグレッシヴでハードなギターロックアルバムで、リハビリ作としては申し分ない作品だと感じました。

ただし、これはシロップの最高傑作ではもちろんないし、傑作とも僕には思えません。

 

クオリティはそれなりの高さを維持しているものの、ほとんどの曲は五十嵐隆の手癖的なメロディが反復されているだけですし、サウンドもどことなくデモ音源の様です。そして絶頂期のバンドにあったような新しさ、イノヴェイティブな部分はほとんどなく、むしろリズムに対する感覚という点ではかなり遅れをとっていると言わざるを得ない(ゼロ年代半ばあたり~現在に至るの音楽的な状況の中でリズムに対する感覚の深化、先鋭化というのは見逃せません)のではないか。

 

だけれど。だけれど正直なところ、そんなようなことは8曲目「生きているよりマシさ」一曲で、なんだかもうどうでもよくなってしまいました。

 



"一人きりでいるのが長過ぎて/急に話しかけられると声出ないよね"

から始まるこの曲の歌詞は、アルバムに収録された他の曲と同様、基本的に五十嵐の休養中の生活のドキュメントです。


”波を立てずに穏やかな暮らしで/目立たないように慎ましやかにして”

"死んでいる方がマシさ/生きているよりマシさ"

シロップ節。といっていいようなフレーズが続きます。 
それは、僕の知っている五十嵐隆が「この状況で歌いそうなこと」でしかないということでもあります。

 

だけれど、終盤に至り、曲は今までになかったような感情の爆発をみせます。

 

"君といられたのが嬉しい/間違いだったけど嬉しい/

会えないのはちょっと寂しい/誰かの君になっても嬉しい"


「君」とはメンバーのことでしょうか、ファンのことでしょうか、それとも音楽のことでしょうか。

 

それら全てに降りそそぐような現在形の「嬉しい」という言葉に、
僕はすべてが救われたような気がしました。
もうだから、反転する。

 

"死んでいる方がマシさ/生きているよりマシさ"

タイトルでもあるこのフレーズに最後まで変化はありませんが、五十嵐は、本当はこう歌いたかったのではないか。


"生きているだけマシさ"

 

でも歌わないですよ、だってダサいし。ベタだし。
それに、聴けばわかるから。

 

MVの唸るほどのわかりやすさは全くいただけないですが、この一曲で、少なくとも僕にとって、あのクソみたいなセルフタイトルの呪縛は解けた、と思います。

 

 

今回のリリースで、確かに光は、前に向かって照射されました。 

逃げ出してもいい。

何年かかってもいいから、また新しい曲を聴かせてほしい。